2012.02.10 *Fri

雪落ちるしっぽ38

 結局、断り切れなかった野月さんが夜、六花さんの部屋へ来る事になった。

 六花さんの家知ってるんだとか、敬語を使う六花さんなんて初めて見たとか。
 自分で振った話のくせに後悔するなんて、みっともない。

 まるで同棲しているかのよう一緒にスーパーで買い出しをして、大きな買い物袋を両手に下げながら1週間ぶりに六花さんの部屋へ入った。
 幸せな時間。…のはずなのに、手放しで喜べない俺は、気持ち悪い。

 野月さんが来なければいいのに…。断ってくれれば。
 そう思ってしまう自分は、とても気持ち悪い人間だった。


 夜19時が過ぎた頃、野月さんは現れた。
 律儀に買って来た6缶入りビールを差し出し、リビングへ入って来る。

 テーブルに皿を並べていた俺の顔を見て、気まずそうに微笑んだ。


「お疲れ様です、野月さん」

「…お疲れ」


 はぁ…と大きな溜め息を吐く姿は、土居さんに無理矢理合コンへ連れて行かれた時と似ている。

 六花さんはニコニコ嬉しそうに笑って、野月さんをソファーへ座るよう誘った。
 断固として床に座ると言い張った野月さんに、「バーカッ」と拗ねたように睨み付けて、俺の腕を引いてソファーへ座った。

 ソファーで肩を並べる俺と六花さん。床で胡坐を掻く野月さん。
 なんとも言えない居心地の悪さを感じながら、鍋パーティは始まった。


「久しぶりですね、野月先輩。1年ぶりですか」

「…あぁ」

「変わってないですね」

「お前もな」

「ずっと会いたかったんですよ、俺」

「…お前が、いきなり切ったんだろう」

「はははっ、そうでした」


 俺の隣で、知らない顔の六花さんが笑う。
 俺に見せてくれているあの顔じゃない、心から気を許している顔。

 話の内容だって、何一つ分からない。
 二人だけが知っている、俺が出会う前の話だ。

 俯き加減に箸を進める俺を最初に気に掛けてくれたのが、野月さんじゃなくて六花さんだから、余計苦い気分になった。


「ごめんな、ジロー。分からない話しちゃって」

「いえ…」


 謝らないでください。
 自分が小さい男だって、見せ付けられているようで嫌だ。






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